在宅医療について

「生きる」と向き合う、ということ薬剤師に託された役目とは

平群店/薬剤師・在宅チームリーダー藤本 郁子

在宅看取り率日本一の奈良県で、サン薬局の薬剤師ができること

実はあまり知られていないことですが、2008年以来、在宅看取り率の日本一は奈良県なのです。その主な理由として、地域医療のネットワークづくりに積極的に取り組まれている在宅ホスピス・ひばりクリニックの森井先生の尽力によるところが大きいと思います。サン薬局では、その年間180名にものぼる緩和処方箋を2008年から全面的に受け入れています。これは、日本有数の症例数になるのではないでしょうか。
最初の2か月間、私は森井先生と同行し、先生の考え方、薬の使い方、患者さんへの接し方を学びました。これは大変貴重な体験でした。しかし、それから今に至っても勉強しなければならないことが山ほどあり、薬剤師にできることは限られていると痛感する毎日です。
生きる望みを失いかけて混乱している患者さんとご家族に対して、薬剤師にいったい何ができるのか。日々、そのことと向き合い続けています。実際に、おひとりの患者さんとお付き合いするのは長くて1年、最も多いのは1~2か月、訪問回数として2~3回という現状があります。何度か訪問してやっと患者さんや家族に受け入れられ、お薬だけでなくいろいろと話ができるようになった頃にお亡くなりになることも少なくありません。それが紛れもない現実なのです。

さまざまな現実と向き合い、ご家族の言葉を支えに取り組む毎日

現在、サン薬局では平群店が在宅拠点となり、複数の薬剤師が在宅チームとして活動しています。たとえば、患者さんのご家族構成が私の家族と近い場合。あるいは小児がんのような幼いお子さんへの対応が必要になる場合。子を持つ親として、一人で立ち向かうのがとても苦しいときには、チームとしてお互いに分担し合うことでずいぶんと救われています。
さまざまな現実と向かい合い、少しでも患者さんのお役に立てるようにと試行錯誤の日々ですが、私たちの救いは患者さんのご家族から最後にいただく言葉です。患者さんがお亡くなりになった後、ご家族が残薬を持ってわざわざ薬局までお越しになり「とてもお世話になりました」とお言葉をくださったときなどは、何とも言えないホッとした気持ちになります。これからも患者さんとご家族の言葉を心の支えに、一日でも長く穏やかな気持ちで過ごしてもらえるように努力していきたいと思っています。